複数のAIエージェントへ仕事を分けると、モデルごとの得意分野や費用を生かせます。一方で、全体の成功率だけを見ると、遅い経路や失敗が集中する担当を見落とします。
AWSが公開したSageMaker AIとBedrock AgentCoreの構成を確認すると、本番導入で先に必要なのはモデル数ではなく、経路ごとの計測です。
先に結論
複数AIを本番へ入れる前に、完了率、p95遅延、1リクエスト当たりのトークン量、人への引継ぎ率を経路別に残してください。
総平均だけでは原因を特定できません。セッションIDに加えて、担当エージェント、モデル、処理結果を同じトレースへ記録し、単一モデル構成より本当に改善したかを比較するのが先です。
AWSの構成から読み取れること
AWSの公式ブログ「Building agentic workflows with SageMaker AI and Bedrock AgentCore」では、AgentCore Runtime上のオーケストレーターが依頼を専門エージェントへ振り分けます。一方はAmazon Bedrockのモデル、もう一方はSageMaker AIのOpenAI互換エンドポイントを使う構成です。
ここで重要なのは、SageMaker AI側のモデル呼び出しでは、Strands Agentsの標準計装だけではトークン情報が自動取得されない点です。公式ブログは、利用量を含めた応答と独自のOpenTelemetryスパンでその欠落を補う方法を示しています。
AgentCore Observabilityの公式ドキュメントでは、セッション数、遅延、処理時間、トークン使用量、エラー率をCloudWatchで確認できると説明されています。つまり、異なるモデルをつなげただけでは運用完成ではなく、経路をまたいで比較できる状態までが実装範囲です。
今回試したこと
AWS環境は構築せず、監視設計だけを先に確かめるため、plannerとexecutorの2経路に固定した架空10リクエストを用意しました。各経路5件について、完了、遅延、トークン量、人への引継ぎをPowerShellで集計しました。
- planner: 完了率100%、p95遅延830ミリ秒、平均1,026トークン、引継ぎ率0%
- executor: 完了率80%、p95遅延1,600ミリ秒、平均1,672トークン、引継ぎ率20%
件数が少ないため性能評価には使えませんが、必要な計測項目を確認するには十分でした。全体平均だけなら「おおむね動く」で終わりますが、経路別にするとexecutorへ遅延、失敗、引継ぎが集中していることが一目で分かります。
本番前に残す4指標
- 完了率: 業務上の完了条件を満たした件数を全リクエスト数で割る。HTTP 200だけを成功にしない。
- p95遅延: 平均値では隠れる遅い5%を監視する。経路、モデル、ツールごとに分ける。
- 平均トークン量: 入力と出力を分け、再試行分も含める。成功1件を得るための費用比較に使う。
- 人への引継ぎ率: 停止条件や承認待ちで人へ戻した割合を残す。ゼロを目標にせず、安全に止まれたかを見る。
実装はこの順番にする
- すべての処理へ`session.id`を付ける
- `agent.route`、`model.id`、`tool.name`、`result`をスパン属性としてそろえる
- 正常、タイムアウト、対象不一致、承認待ちの固定シナリオを流す
- 経路別の完了率とp95を単一モデル構成と比較する
- 悪化した経路はモデルを増やす前に、入力、再試行、ツール呼び出しを直す
最初から大量の本番ログを集める必要はありません。まず固定シナリオで欠けている属性を見つけ、その後に少量の実トラフィックでしきい値を決めるほうが、原因を追いやすくなります。
判断基準
複数モデル構成は、品質、費用、データ配置のいずれかに明確な利点がある場合に採用します。専門エージェントを増やしても、完了率が上がらずp95と引継ぎ率だけが悪化するなら、単一モデルへ戻す判断が必要です。
ブラウザ操作を伴うAIでは、確定前に人へ戻す境界も先に決めてください。具体例は「古いWeb業務をAI化する前の5確認」で整理しています。
出典
- Building agentic workflows with SageMaker AI and Bedrock AgentCore / AWS Machine Learning Blog
- Observe your agent applications on Amazon Bedrock AgentCore Observability / AWS Documentation
執筆・検証: しろのあ。一次情報、実行範囲、未検証部分を分けて記載しています。

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